古英語メモ:名詞:一般的注意、強変化男性・中性

古英語
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一般的注意

・3つの文法的性(男性中性女性)に分かれる。←掛け持ちもある(sǣ(sea)サーは男女兼、など)

・それぞれ数(単数・複数)と格(〔は〕・〔を〕・〔の〕・〔に〕)にしたがって語形変化(曲用/格変化)する。

・語形変化は不規則変化を除いて、大きく強変化弱変化に分かれる。強弱の差異は、主に変化の度合いの違いである。

主格と対格は、だいたい同じ形になる。

強変化男性・中性

基本の変化

・男性と中性は、基本的に複数の主格・対格のみ異なり、他は同じ。

・中性にて、短語幹の scip には -u がつき、長語幹の word には何もつかないことに注意。

stān(stone)〔男〕
SGPL
stān スターンstān-as スターナス
stān スターンstān-as スターナス
stān-es スターネスstān-a スターナ
stān-e スターネstān-um スターヌム
scip(ship)〔中〕
SGPL
scip シップscip-u シップ
scip シップscip-u シップ
scip-es シッペスscip-a シッパ
scip-e シッペscip-um シップム
word(word)〔中〕
SGPL
word ウォルドword ウォルド
word ウォルドword ウォルド
word-es ウォルデスword-a ウォルダ
word-e ウォルデword-um ウォルドゥム

æ >a の交替

単数の æ が、複数で a となる。いずれも1音節・短語幹で、中性は scip に倣う。

dæġ(day)〔男〕
SGPL
dæġ ダイdag-as ダガス
dæġ ダイdag-as ダガス
dæġ-es ダイェスdag-a ダガ
dæġ-e ダイェdag-um ダグム
fæt(vessel 船)〔中〕
SGPL
fæt ファトfat-u ファトゥ
fæt ファトfat-u ファトゥ
fæt-es ファテスfat-a ファタ
fæt-e ファテfat-um ファトゥム

h が落ちるもの

・少なくとも表面的には、h が落ちた後語幹の母音が長ければそのまま、短ければ伸びる

 ← 落ちた h の穴を埋めるような感じ、代償延長的な…?

scōh(shoe)〔男〕
SGPL
scōh ショーフscōs ショース
scōh ショーフscōs ショース
scōs ショースscōna ショーナ
scō ショーscōm ショーム

・単属のでき方推定、scōh-es >scō-es >scōs ←母音の間で h が落ち、残った母音が融合。

・複属では、scōh-a >scō-a で scō になりそうだが、実際は scōna ← scōh-ena から?

eoh(馬)〔男〕
SGPL
eoh エオフēos エーオス
eoh エオフēos エーオス
ēos エーオスēona エーオナ
ēo エーオēom エーオム

・scōh とほぼ変わりないが、eo >ēo となり、h の脱落と共に、語幹の母音が伸びている。

mearh(馬)〔男〕
SGPL
mearh メアルフmēar-as メーアラス
mearh メアルフmēar-as メーアラス
mēar-es メーアレスmēar-a メーアラ
mēar-e メーアレmēar-um メーアルム

・h の脱落と母音の延長は r / l と母音の間でも起こる。

-u/o で終わるもの

bearu, -o(grove 木立)〔男〕
SGPL
bearu ベアルbearw-as ベアルワス
bearu ベアルbearw-as ベアルワス
bearw-es ベアルウェスbearw-a ベアルワ
bearw-e ベアルウェbearw-um ベアルウム

・母音で始まる語尾の前で、u/o >w となる。

中性は word に倣う。 ←searu, -o(device しかけ)〔中〕>複主対 searu

中間母音が落ちるもの

engel(angel)〔男〕
SGPL
engel エンゲルengl-as エングラス
engel エンゲルengl-as エングラス
engl-es エングレスengl-a エングラ
engl-e エングレengl-um エングルム

en-gel のように、2音節・長語幹で、長-短の構造をもつものは、中間母音が落ちることが多い。 

engel-es >(音節)en-ge-les >engl-es

中性は scip に倣う。 ← hēafod ヘーアフォド(頭)〔中〕>複主対 hēafd-u

-e で終わるもの

ende(end)〔男〕
SGPL
end-e エンデend-as エンダス
end-e エンデend-as エンダス
end-es エンデスend-a エンダ
end-e エンデend-um エンドゥム

中性は scip に倣う。 ← rīċ-e リーチェ(王国)〔中〕>複主対 rīċ-u

参考資料

・近藤健二・藤原保明(2003)『古英語の初歩』(英語学入門講座第4巻)荒木一雄監修, 英潮社.

・Mitchell, B., Robinson, F. C.(1992)A Guide to Old English, Fifth Edition. Oxford: Blackwell Publishers Ltd.