古ノルド語メモ:名詞:一般的注意、強変化 a型

古ノルド語
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一般的注意

・3つの(男性・中性・女性)があり、(単数・複数)と(主・対・属・与)によって語形変化(曲用 / 格変化)する。

・名詞の変化は、大きく強変化と、弱変化の2つに分かれる。

・強変化の多くは、単数主格が子音で終わり、弱変化はすべて母音で終わる。

・中性は、だいたい主格形=対格形。←たまに母音が変わったりしてズレる。

a型

男性と中性があり、a-語幹、ja-語幹、wa-語幹に分けられる。

a-語幹

harmr(悲しみ)〔男〕
SGPL
harm-r ハルムルharm-ar ハルマル
harm ハルムharm-a ハルマ
harm-s ハルムスharm-a ハルマ
harm-i ハルミhǫrm-um ホルムム

・強変化男性の多くは、だいたいこの変化。

himinn(空)〔男〕
SGPL
himin-n ヒミンンhimn-ar ヒムナル
himin ヒミンhimn-a ヒムナ
himin-s ヒミンスhimn-a ヒムナ
himn-i ヒムニhimn-um ヒムヌム

・母音で始まる語尾がつくと、間の母音が落ちる模様。

barn(子供)〔中〕
SGPL
barn バルンbǫrn ボルン
barn バルンbǫrn ボルン
barn-s バルンスbǫrn-a ボルナ
barn-i バルニbǫrn-um ボルヌム

・単複の母音変化がポイント。また、単複それぞれ、主=対。 

kné(ひざ)〔中〕
SGPL
kné クネーkné クネー
kné クネーkné クネー
kné-s クネースkn クニヤー
kné クネーknjám クニヤーム
knjóm クニヨーム

・ほとんど形が変わらないが、複数の属・与が独特。 古英語 cnēo クネーオ

ja-語幹

i, j がどこで出てくるかがポイント。

niðr(血縁者)〔男〕
SGPL
nið-r ニズルniðj-ar ニズィヤル
nið ニズniðj-a ニズィヤ
nið-s ニズスniðj-a ニズィヤ
nið ニズniðj-um ニズィユム

・単数 nið ⇔ niðj 複数

hirðir(羊飼い)〔男〕
SGPL
hirði-r ヒルズィルhirð-ar ヒルザル
hirði ヒルズィhirð-a ヒルザ
hirði-s ヒルズィスhirð-a ヒルザ
hirði ヒルズィhirð-um ヒルズム

・単数 hirði ⇔ hirð 複数 ゴート語 haírdeis ヘルディース

ríki(王国)〔中〕
SGPL
ríki リーキríki リーキ
ríki リーキríki リーキ
ríki-s リーキスríkj-a リーキヤ
ríki リーキríkj-um リーキユム

・母音前で j 的な感じ。 古英語 rīċu リーチュ

kyn(親族)〔中〕
SGPL
kyn キュンkyn キュン
kyn キュンkyn キュン
kyn-s キュンスkynj-a キュニヤ
kyni キュニkynj-um キュニユム

・ríki の主・対と単数属格で i が落ちた感。

kvæði(詩)〔中〕
SGPL
kvæði クワーズィkvæði クワーズィ
kvæði クワーズィkvæði クワーズィ
kvæði-s クワーズィスkvæð-a クワーザ
kvæði クワーズィkvæð-um クワーズム

・複数の属・与で i が落ちる。

wa-語幹

・古ノルド語の表記に倣うなら va-語幹。どこに v が出てくるかがポイント。

sǫngr(歌)〔男〕
SGPL
sǫng-r ソングルsǫngv-ar ソングワル
sǫng ソングsǫngv-a ソングワ
sǫng-s ソングスsǫngv-a ソングワ
sǫngv-i ソングウィsǫng-um ソングム

・だいたい母音前で v が出る。

sær(海)〔男〕
SGPL
sæ-r サールv-ar サーワル
sæ サーv-a サーワ
v-ar サーワルv-a サーワ
v-i サーウィ
サー
v-um サーウム
sæ-um サーウム

・やや不規則、i 型の形が混じっている模様。

hǫgg(打撃)〔中〕
SGPL
hǫgg ホッグhǫgg ホッグ
hǫgg ホッグhǫgg ホッグ
hǫgg-s ホッホスhǫggv-a ホッグワ
hǫggv-i ホッグウィhǫgg-um ホッグム

・主格=対格。中性あるある。

参考資料

・下宮忠雄・金子貞雄(2006)『古アイスランド語入門』大学書林.

・Gordon, Eric V., Taylor, A. R.(1981)An Introduction to Old Norse, 2nd ed. Oxford: Clarendon Press.

・Barnes, M., Faulkes, A.(2007)A New Introduction to Old Norse. Part I – Grammar. Viking Society for Northern Research. University College London.