古ノルド語メモ:名詞:強変化 ō型

古ノルド語
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ō型

女性のみ。ō-語幹、jō-語幹、wō-語幹を区別する。

ō-語幹

grǫf(墓)〔女〕
SGPL
grǫf グロブgraf-ar グラバル
grǫf グロブgraf-ar グラバル
graf-ar グラバルgraf-a グラバ
grǫf グロブgrǫf-um グロブム

・a で始まる語尾がついたとき、ǫ>a になる。ō はどこだ…という感じだが、おそらく ō は a に合流したと思われる。しかし何故こんな単語ばっかり。

fjǫðr(羽)〔女〕
SGPL
fjǫðr フィヨズルfjaðr-ar フィヤズラル
fjǫðr フィヨズルfjaðr-ar フィヤズラル
fjaðr-ar フィヤズラルfjaðr-a フィヤズラ
fjǫðr フィヨズルfjǫðr-um フィヨズルム
á(川)〔女〕
SGPL
á アーár アール
áir アーイル
á アーár アール
áir アーイル
ár アールá アー
á アーám アーム

・同化してる…? 複数主・対で i 型の別形をもつ模様。そういう名詞が多少あるらしい。

sól(太陽)〔女〕
SGPL
sól ソールsól-ar ソーラル
sól-ir ソーリル
sól ソールsól-ar ソーラル
sól-ir ソーリル
sól-ar ソーラルsól-a ソーラ
sól ソール
sól-u ソール
sól-um ソールム

単数の与格で -u をもつ。また、語幹の母音が変わらない。それと i 型混じり。

-ing, -ung で終わるもの、他いくつかの名詞は、単数の与格で -u をもつ。

-rún, -veig, -vǫr に終わるもの、Ingibjǫrg などの固有名詞は、単数の・与で -u をもつ。

jō-語幹

・i, j に注意。下記 ben と ey は短語幹、heið-r は長語幹らしいのだが、ey, ei がそれぞれ二重母音だとすると、後ろ2つの違いがよく分からない。ただ、変化は明らかに違う感。←benj, eyj, heiði で考えると heiðr がちょっと長そう。

ben(傷)〔女〕
SGPL
ben ベンbenj-ar ベニヤル
ben ベンbenj-ar ベニヤル
benj-ar ベニヤルbenj-a ベニヤ
ben ベンbenj-um ベニユム
ey(島)〔女〕
SGPL
ey エイeyj-ar エイヤル
ey エイeyj-ar エイヤル
eyj-ar エイヤルeyj-a エイヤ
ey エイ
eyj-u エイユ
eyj-um エイユム

・単数の与格で -u をもつ。

heiðr(荒れ地)〔女〕
SGPL
heið-r ヘイズルheið-ar ヘイザル
heiði ヘイズィheið-ar ヘイザル
heið-ar ヘイザルheið-a ヘイザ
heiði ヘイズィheið-um ヘイズム

・あまり j というか i が出てこない。

wō-語幹

v が入る。

ǫr(矢)〔女〕
SGPL
ǫr オルǫrv-ar オルワル
ǫr オルǫrv-ar オルワル
ǫrv-ar オルワルǫrv-a オルワ
ǫr オル
ǫr-u オル
ǫr-um オルム

・単数の与格で -u をもつ。w は入っていない。

参考資料

・下宮忠雄・金子貞雄(2006)『古アイスランド語入門』大学書林.

・Gordon, Eric V., Taylor, A. R.(1981)An Introduction to Old Norse, 2nd ed. Oxford: Clarendon Press.

・Barnes, M., Faulkes, A.(2007)A New Introduction to Old Norse. Part I – Grammar. Viking Society for Northern Research. University College London.