ゴート語メモ:形容詞:一般的注意、強変化

ゴート語
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一般的注意

・形容詞は、かかる名詞の性・数・格にしたがって語形変化する。

・呼格形は、主格形で代用される。

強変化弱変化があり、どちらも述語的(~だ)、また付加語的(~な)に用いられる。

強変化は、名詞・形容詞の組み合わせが、特定化または個別化されていない場合、弱変化されている場合に使われる。結果、弱変化は冠詞的な指示代名詞と組むことが多い。

 ←はじめて出てきたとき(強)に対して、2回目以降(弱)的な感じ。

・たいていの形容詞は強弱両方に変化するが、片方だけのものもある。

名詞として使われることがある。←男性で「~な男・人」、女性で「~な女」、中性で「~なもの・こと」

形容詞強変化

・名詞に倣って変化する短語尾形と、代名詞に倣って変化する長語尾形が混じり合っている。

・中性にて、単数の主格・対格にある -ata 終わりの形は、付加語として使われるのが普通。

・名詞の母音型変化に対応して、a/ō 型、ja/jō 型、i 型、u 型に分けられる。

・以下のものは、強変化のみ行う。

áins(数詞1)、alls(すべての)、fulls(満ちた)、halbs(半分の)、ganōhs(十分な)、midjis(真ん中の)など

a/ō 型

男性と中性で a型名詞 a-語幹(dags, waúrd)、女性で ō型名詞 ō-語幹(giba)の語形変化に倣う。ところどころ主に指示代名詞に通じる形が混じる。

unsar(私たちの)、izwar(あなたたちの)、anþar(第2の、他の)、ƕaþar(両者のうちどちらか)は、男性の単数・主格で -s が落ち、中性の単数、主格・対格で -ata 終わりの形を持たない。

blinds(盲目の)
SGPL
blind-s ブリンズblind-ái ブリンダイ
blind-is ブリンディスblind-áizē ブリンダイゼー
blind-amma ブリンダンマblind-áim ブリンダイム
blind-ana ブリンダナblind-ans ブリンダンス
SGPL
blind ブリンド
blind-ata ブリンダタ
blind-a ブリンダ
blind-is ブリンディスblind-áizē ブリンダイゼー
blind-amma ブリンダンマblind-áim ブリンダイム
blind ブリンド
blind-ata ブリンダタ
blind-a ブリンダ
SGPL
blind-a ブリンダblind-ōs ブリンドース
blind-áizōs ブリンダイゾースblind-áizō ブリンダイゾー
blind-ái ブリンダイblind-áim ブリンダイム
blind-a ブリンダblind-ōs ブリンドース

ja/jō 型

・a型名詞 ja-語幹と同じく、j の変化がポイント。←後に母音が来なければ i、長語幹の後で ji >ei

男性と中性で a型名詞 ja-語幹(〔短〕harjis〔長〕haírdeis, kuni)、女性で a型名詞 jō-語幹(〔短〕sunja〔長〕bandi)の語形変化に倣う。例によって代名詞系の形が混じる。

midjis(真ん中の)〔短〕
SGPL
midj-is ミディイスmidj-ái ミディヤイ
midj-is ミディイスmidj-áizē ミディヤイゼー
midj-amma ミディヤンマmidj-áim ミディヤイム
midj-ana ミディヤナmidj-ans ミディヤンス
SGPL
midi ミズィ
midj-ata ミディヤタ
midj-a ミディヤ
midj-is ミディイスmidj-áizē ミディヤイゼー
midj-amma ミディヤンマmidj-áim ミディヤイム
midi ミズィ
midj-ata ミディヤタ
midj-a ミディヤ
SGPL
midj-a ミディヤmidj-ōs ミディヨース
midj-áizōs ミディヤイゾースmidj-áizō ミディヤイゾー
midj-ái ミディヤイmidj-áim ミディヤイム
midj-a ミディヤmidj-ōs ミディヨース
wilþeis(野生の)〔長〕
SGPL
wilþeis ウィルスィースwilþj-ái ウィルスィヤイ
wilþeis ウィルスィースwilþj-áizē ウィルスィヤイゼー
wilþj-amma ウィルスィヤンマwilþj-áim ウィルスィヤイム
wilþj-ana ウィルスィヤナwilþj-ans ウィルスィヤンス
SGPL
wilþi ウィルスィ
wilþj-ata ウィルスィヤタ
wilþj-a ウィルスィヤ
wilþeis ウィルスィースwilþj-áizē ウィルスィヤイゼー
wilþj-amma ウィルスィヤンマwilþj-áim ウィルスィヤイム
wilþi ウィルスィ
wilþj-ata ウィルスィヤタ
wilþj-a ウィルスィヤ
SGPL
wilþi ウィルスィwilþj-ōs ウィルスィヨース
wilþj-áizōs ウィルスィヤイゾースwilþj-áizō ウィルスィヤイゾー
wilþj-ái ウィルスィヤイwilþj-áim ウィルスィヤイム
wilþj-a ウィルスィヤwilþj-ōs ウィルスィヨース

i 型

・i-語幹の形は単数のみ(黄色部分、男性で gasts、女性で qēn に倣う)。大部分が上記 ja/jō 型(midjis〔短〕)の語形変化に倣う。

hráins(清い)
SGPL
hráin-s フラインスhráinj-ái フライニヤイ
hráin-is フライニスhráinj-áizē フライニヤイゼー
hráinj-amma フライニヤンマhráinj-áim フライニヤイム
hráinj-ana フライニヤナhráinj-ans フライニヤンス
SGPL
hráin フライン
hráinj-ata フライニヤタ
hráinj-a フライニヤ
hráin-is フライニスhráinj-áizē フライニヤイゼー
hráinj-amma フライニヤンマhráinj-áim フライニヤイム
hráin フライン
hráinj-ata フライニヤタ
hráinj-a フライニヤ
SGPL
hráins フラインスhráinj-ōs フライニヨース
hráinjáizōs フライニヤイゾースhráinj-áizō フライニヤイゾー
hráinj-ái フライニヤイhráinj-áim フライニヤイム
hráinj-a フライニヤhráinj-ōs フライニヨース

u 型

・i 型と同じく、u-語幹の形は単数のみ(男性と女性で sunus、中性で faíhu に倣う)。大部分ja/jō 型(midjis〔短〕)の語形変化に倣う。

hardus(硬い)
SGPL
hard-us ハルドゥスhardj-ái ハルディヤイ
hard-áus ハルダウスhardj-áizē ハルディヤイゼー
hardj-amma ハルディヤンマhardj-áim ハルディヤイム
hardj-ana ハルディヤナhardj-ans ハルディヤンス
SGPL
hard-u ハルドゥhardj-a ハルディヤ
hard-áus ハルダウスhardj-áizē ハルディヤイゼー
hardj-amma ハルディヤンマhardj-áim ハルディヤイム
hard-u ハルドゥhardj-a ハルディヤ
SGPL
hard-us ハルドゥスhardj-ōs ハルディヨース
hardj-áizōs ハルディヤイゾースhardj-áizō ハルディヤイゾー
hardj-ái ハルディヤイhardj-áim ハルディヤイム
hardj-a ハルディヤhardj-ōs ハルディヨース

参考資料

・高橋輝和(2023)『ゴート語入門 新版』白水社 初版:クロノス, 1982年刊

・千種眞一(1989)『ゴート語の聖書』大学書林

・Bennett, W. H.(1980)An Introduction to the Gothic Language. New York: The Modern Language Association of America.