古英語メモ:動詞:過去現在動詞

古英語
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過去現在動詞

・本来の現在形を失い、過去形(強変化)が現在の意味を表すようになった動詞。

・結果として、過去の意味を表す形がなくなったため、改めて弱変化による過去形(歯音接尾辞がつく)が作られた。

・このタイプにて、代表的なものは、以下の12個である。なお、ゴート語にあわせて、直現13単(元の第一過去)を代表形としてある。

直現13単直現2単直現複過去分詞直過13単
wāt(知っている)wāstwit-on(ġe)wit-enwis-te
wis-se
dēah(役に立つ)dug-ondoh-te
can(n)(知っている)canstcunn-oncūcū-þe
þearf(必要とする)þearftþurf-onþorf-te
dear(r)(あえてする)dearstdurr-ondors-te
ġeman(覚えている)ġemanstġemun-on(ġe)mun-enġemun-de
sceal(せねばならぬ)scealtscul-onsc(e)ol-de
ġeneah(十分である)ġenug-onġenoh-te
mōt(許されている)mōstmōt-onmōs-te
āh(持っている)āhstāg-onāg-en
ǣg-en
āh-te
mæġ(できる)meahtmag-onmeah-te
mih-te
an(n)(許可する)unn-onġeunn-enū-þe

不定詞は、直現複の -on を -an にすれば得られる。

wāt >wit-on >不 wit-an

・その他、直現複の語幹から、仮定法現在、命令法、現在分詞が作られる。ただし、仮現では u >y となる場合がある。

þearf >þurf-on >仮現単 þurf-e/ þyrf-e

・また mæġ は、仮現で mæġ-e, mæġ-en となる。

例:wāt(wit-an 知っている)

現在直説法仮定法
SG1wāt ワート
2wāst ワースト{ wit-e ウィテ
3wāt ワート
PLwit-on ウィトンwit-en ウィテン
過去直説法仮定法
SG1wis-te ウィステ
wis-se ウィッセ
2wis-test ウィステスト
wis-sest ウィッセスト
{ wis-te ウィステ
wis-se ウィッセ
3wis-te ウィステ
wis-se ウィッセ
PLwis-ton ウィストンwis-ten ウィステン
命令法
SGwit-e ウィテ
PLwit-að ウィタズ
不定詞wit-an ウィタン
与格不定詞tō wit-enne トー ウィテンネ
現在分詞wit-ende ウィテンデ
過去分詞ġewit-en イェウィタン

参考資料

・近藤健二・藤原保明(2003)『古英語の初歩』(英語学入門講座第4巻)荒木一雄監修, 英潮社.

・Mitchell, B., Robinson, F. C.(1992)A Guide to Old English, Fifth Edition. Oxford: Blackwell Publishers Ltd.