古ノルド語メモ:代名詞:人称代名詞、再帰代名詞、所有代名詞

古ノルド語
古ノルド語学習の覚書です。はじめての方は、サイドの管理人紹介欄をお読みください。

人称代名詞・再帰代名詞

1・2人称は数と格、再帰は格のみ、3人称は性・数・格を区別する。

・1・2人称の斜格(主格以外の格)は、再帰的に使われることもある。

1人称 ek, vit, vér(私、私たち2人、私たち)
SGDUPL
ek エクvit ウィトvér ウェール
mik ミクokkr オックルoss オッス
mín ミーンokkar オッカルvár ワール
mér メールokkr オックルoss オッス

ek はしばしば動詞に接尾される。とくに詩ではそうなる。←多少音変化あり? e が落ちたりとか。

mæli-k(私は話す〔mæla 弱1 現1単〕) 
hykk <hygg-ek(私は考える〔hyggja 弱1 現1単〕)←縮約?
2人称 þú, it/þit, ér/þér(あなた、あなたたち2人、あなたたち)
SGDUPL
þú スーit イト
þit スィト
ér エール
þér セール
þik スィクykkr ユックルyðr ユズル
þín スィーンykkar ユッカルyðar ユザル
þér セールykkr ユックルyðr ユズル

þú は普通、動詞に接尾される。その際は基本 -ðu、無声子音の後では -tu となる。

heyr-ðu(聞け〔heyra 弱1 命2単〕)←たぶん
skaltu <skalt-þú(あなたはすべきだ〔skulu 現2単〕)←縮約?

・両数と複数の it, ér に対する þit, þér の形は、ð で終わる動詞形の後についたとき、その ð を受けたものである。←異分析? その後単体では無声化?

skuluð ér >skuluðér >sku-lu-ðér(音節切)
再帰〔3人称〕(~自身)
SG, DU, PL
sik スィク
sín スィーン
sér セール
3人称 hann, þat, hon(彼、それ、彼女)

複数形はもともと指示代名詞だった。これらは再帰的に使われない。その用途には上の再帰代名詞を用いる。

SGPL
hann ハンンþeir セイル
hann ハンンþá サー
hans ハンスþeirra セイッラ
þeira セイラ
honum ホヌムþeim セイム
SGPL
þat サトþau サウ
þat サトþau サウ
þess セスþeirra セイッラ
þeira セイラ
því スウィー
þí スィー
þeim セイム
SGPL
hon ホンþær サール
han-a ハナþær サール
hen-nar ヘンナルþeirra セイッラ
þeira セイラ
hen-ni ヘンニþeim セイム

所有代名詞

・上の属格形から、所有代名詞が作られる。語形変化は、形容詞強変化に倣う。ただし母音の短縮(vár以外)と nr >nn の同化に注意する。

mín-n(私の)okkar-r(私たち2人の)vár-r(私たちの)
þín-n(あなたの)ykkar-r(あなたたち2人の)yðar-r(あなたたちの)
sín-n(~自身の)

3人称 hans, þess, hennar, þeira は、語形変化しない形容詞として使われる。

mínn(私の)
SGPL
min-n ミンンmín-ir ミーニル
min-n ミンンmín-a ミーナ
mín-s ミーンスmin-na ミンナ
mín-um ミーヌムmín-um ミーヌム
SGPL
mitt ミットmín ミーン
mitt ミットmín ミーン
mín-s ミーンスmin-na ミンナ
mín-u ミーヌmín-um ミーヌム
SGPL
mín ミーンmín-ar ミーナル
mín-a ミーナmín-ar ミーナル
min-nar ミンナルmin-na ミンナ
min-ni ミンニmín-um ミーヌム

参考資料

・下宮忠雄・金子貞雄(2006)『古アイスランド語入門』大学書林.

・Gordon, Eric V., Taylor, A. R.(1981)An Introduction to Old Norse, 2nd ed. Oxford: Clarendon Press.

・Barnes, M., Faulkes, A.(2007)A New Introduction to Old Norse. Part I – Grammar. Viking Society for Northern Research. University College London.